この417 「おじさんの皮脂の有効活用」事例

ツイッターに書き込んだらほめられたので、こちらに転載(一部修正)。





「おじさんの皮脂の有効活用」事例


以前、会社勤めをしていたとき、
毎日昼休みになると女子社員が一斉に、
トイレの鏡の前に詰め掛けて化粧直しをしていました。

若い女性が顔じゅうにぺたぺたと油取り紙を張りつけたまま、
銃撃戦のようなトークを展開するのです。

私は、この、トイレで毎日とめどなく絞り出される顔の油(皮脂)を、
何かに利用できないものかと考えました。
もし、顔の油で走る車などができたら
国じゅうの女子トイレが油田になる。そう思ったのです。

その後も私は、皮脂の活用法について結構まじめに何年も考えていました。
ふりかえると、周囲の友人たちの苦労がうかがえます。
そんなあるとき、知人から
「顔の油で製品チェックをしている企業がある」という話を耳にしました。

その会社とは、Gペンでさんざんお世話になっていた、
おなじみの文具メーカー「ゼブラ」でした。
ゼブラのボールペンの試験に、
おじさんの顔の油が使われているというのです。

私は、ことの真偽を確かめるべく、帰宅してすぐに、
ゼブラのペンのパッケージに書かれた住所に手紙を書きました。
「こんな話を聞きましたが事実でしょうか」といった内容です。

10日ほどたったある日、女性の名で一通の封書が届きました。
なんと、ゼブラでボールペンの製品試験を担当している方、
ご本人からお返事をいただいたのです。

「この達筆もゼブラのボールペンで書かれたに違いない…!」
私は興奮していました。
手紙によると、書くときに紙に染み込んだ手の油(皮脂)が、
ボールペンのインクをはじいてしまわないかの試験をするために、
おじさんの顔の油を使っている、とのことでした。
噂は事実だったのです。

当初、試験には、ゼブラ内で開発された、
ヒトの皮脂を人工的に再現した薬品が使われていたそうです。
繰り返し繰り返し試験をして、
パスしたインクをボールペンに詰めて出荷するわけです。

ところが、きちんとテストをパスしているにもかかわらず、
「インクがはじいて文字が書けない」という苦情があとを断たない。
薬品の改良を何度重ねても同じ苦情が来てしまう。

これには理由がありました。
ヒトの皮脂というのは、体調、体温、気温、湿度や食べたものなど、
いろいろなことに影響されて刻々と成分を変え続けるものであり、
成分が一定している人工的な薬品では、
皮脂を再現することはできなかったのです。

そこで「本物」が登場するわけです。

試験場では、数十人のひとに紙が配られ、
そこにおじさんが、鼻の油を指でとり「ぺたっ、ぺたっ」と順番に付けていく。
そうして試験官は一斉に、紙に文字を書いていくのだそうです。

ちなみに、書かれる文字は、筆記体で「Jhonson」。
これには、とめ、はね、はらいなど、
文字を書くうえでのあらゆる動作が含まれているそう。
書道でいうところの「永」の字と一緒ですね。

私は規則正しく顔の油をつけていくおじさんと、
「ジョンソン、ジョンソン、ジョンソン…」と黙々と書き続けるひとびとのいる
静かな光景を想像し、うっとりとしました。

ところで、なぜ「おじさん」の油なのか。
ボールペンを使うのはおじさんに限られてはいません。
それに、製品試験担当の方は女性です。
それなのにわざわざ上司を引っ張りだしてきて、
油を頂戴する理由とは何なのでしょうか。

それは……「担当者が女性だから」。
そのままの理由でした。
おじさんの、部下への思いやりが製品試験に導入されていたのです。

丁寧に綴られた手紙とその内容に、私は感激し、
ますますゼブラという会社が好きになりました。

以上が、私の知っている「おじさんの皮脂の有効活用」事例です。




ちなみに現在私が、作画に使用している主な画材は、
呉竹の「筆ごこち」と、ぺんてるの「筆《中字》」ですが。

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