この529 めがねを新調する日

ネームをpcで作るようになってから転げ落ちるように目が見えづらくなっている。つらい。
40がらみの漫画家飲み会で必ず話題に登るあれが自分にも来たのか。

めがねは好きだ。めがねをかけている女性も男性も好き。
めがねをかけている人間にはめがねをかけるに至るまでの経緯がある。
それをいろいろ想像する。ポジティブなものもネガティブなものも、だいたい好ましく思える。
しかしめがね好きの私とはかなり長い付き合いにもかかわらず無視され続けているめがねびとがいる。
私だ。
おっぱい好きの女子が自分の乳は完スルーなのと同様、自分のめがねなどなんだっていい。
コップの底でものぞいてろという気分である。

しかしコップで仕事ははかどらない。
眼鏡店へ行かなくてはならない。
めがねは顔の一部だ、皮膚だ、いや臓器のひとつだ。
これから私に会うひとはめがねごと「イシデ」と認識する。
鼻や目や口は選べないがめがねは選べる。
「なんだっていい」のなら不恰好じゃないほうを選ぶにこしたことはない。
自分を奮い立たせる。ゆけ、ゆけ、荒野を。
ローレンローレンローレン、ローレンローレンローレン…
完全に老眼を意識したテーマを頭のなかで口ずさみながら店に入る。

眼鏡店で勤務経験のある知人に教わった、めがねのつるに書いてある数字の読み方を思い出しながら選んでいく。
「53□18-140」
最初の2ケタがレンズの横幅のサイズだ。
つまりここの数値が大きければ眼鏡全体の横幅も大きくなる。
横幅が小さいめがねは顔面の大きさがきわだって悲しくなる。
しかし大きければよいというものではない。
私は現在マッシュルームカットをしており、極端に大きいと大木凡人になる。
なにを言う、むしろそこを目指してこそのキノコ頭ではないのか。う、だかしかし。
ひとしきり迷って55bondくらいのものを選んだ。

店員さんによると、見えづらいのは視力の低下ではなく疲れ目によるもので、めがねの度数はむしろ下げたほうがよいかもしれないという。
見えないから疲れるというよりめがねの強い度数に合わせて見ようと調節する神経が疲れるから疲れる。
度数をすこし落とせば楽になり、肩こり首こりも楽になり頭痛は治り緊張型の性格は穏やかになり大らかになり寛容になり多くのひとに愛され私もまた人類を愛し世界は平和になり戦争はなくなるという。
嘘だ、そんなことは言っていない。
めがねの完成を待っているあいだの30分が期待を過剰にさせる。

めがねの新調じたいが急な出費であるにもかかわらず、気が大きくなってまわるお寿司を茶碗蒸しまで添えて食べてしまった。


この528 ペヤングに味噌汁を添える日

ネーム、またボツになる。

つくづく向いていない。
けれどほかになんの仕事ができるんだろう。
毎日やれることって漫画しかないのに。
あとは猫のトイレ掃除と、呼吸と…と続いているものを探すが思いつかなさに落ち込む。
またアシスタントやるにしても、年上で漫画家づらのへたくそなアシなんて扱いづらいよなあ…

Twitterで流れてきた性格診断心理テストをいたずらにやってみたら、向いている業種はなく、適職は呪術師と出た。
呪う力と常識のなさを評価された。うるせえ。

ええい、椅子からぴょんと立ち上がって
「ん・で・だ・よー!!?おもしれーじゃんかよーこのネーム!!」と大げさに肩を揺らしガニ股で歩いてみる。
顔は森田まさのり先生ふうに。

ごはんにしましょう。

景気付けに、お楽しみにとっておいたペヤングを解禁。
なんと紅しょうがもあるんですのよ。
あとは焼いた鶏肉とセロリのぬか漬けとお味噌汁。

味噌は赤味噌と麦味噌を常備していて、お味噌汁に入れる比率でその日の気持ちが占える。
麦が多いときはいたわりや慰めを求めていて、キリッとしたいときは赤が多くなる。
気合いを入れて打ち合わせに臨みたいときなどは完全に赤だけ。

意外と元気あるな私、と、赤いお味噌汁をおたまでまわしながら思う。
元気があれば作戦会議ができる。
次の手を考えながらごはん。
それから原稿作業。
落ち込んでいるあいだにすっかり手が止まってしまった。

PC作業のかたわらちょいとテレビをつけてみたらどのチャンネルも不倫のことばかり。
不倫のニュースが終わったらまた別のひとの不倫。
Eテレ、おかあさんといっしょに落ち着く。
着ぐるみキャラの目のハイライトの過剰さが気に入らない。
キャラクターの目の輝きとは心のなかに見いだすものだ、ミッフィーくんを見たまえ。
昨今のきらきらおめめのキティ氏はなんだ、なげかわしい…
と、エアくちひげをひっぱりながらぶつぶつ。

猫が2匹ともトイレでおならをしたのが心配である。
2匹同様の体調不良があるということは飼い主がなにかやらかしている可能性がある。
…と思うのだがうちの猫たちは健康診断の結果もほとんど同じで、同時に調子をくずして同時に治まるということがわりとある。
2匹いっぺんに死んじゃったらどうなるんだろう私…とわきあがってくる不安をぐっとこらえる。

なにか楽しげなものをと、プライムビデオで「ウレロ 未確認少女」をかける。
東京03の飯塚氏が演じる、唯一のまじめな常識人なのにキレるとえげつないほど暴力的な人格に豹変し周囲の人間全員を震え上がらせるキャラクターが好きで、その場面を心待ちにしてしまう。
自分の嗜好に多少引く。

この527 映画から戻れない日

夜中に原稿作業をしていたら台所のほうでガタンと物音がしたのでビクビクしつつ確認しにいったとき手にしていたのはうさぎのぬいぐるみであった。
もっとこうさ、あるでしょうクイックルワイパーとかスマホとかさ。
危機管理能力テスト、0点。

流しに洗い物をまたためてしまった。
物音は、そいつがずれた音のようだ。
今日の原稿作業はここまで、と食器を片付ける。

お酒を飲みながら寝落ちするまで次のネームのネタ出し。
明るくなってきたのでごみを出して寝る。

昼過ぎに起きて原稿。
今日はきのうのつづき、明日は今日のつづき。

のはずが、たまたま流れていたテレ東の映画を途中からなのに一生懸命観てしまう。
なんか、ひとに火をつけたり逃げたりおっかけたりピストル打ったり大金盗もうとして電車乗っ取ったり衝突させたりするやつ。

動揺させられるのが苦手なので、でかいものやでかい音や速いもの高いところから落ちそうになること陥れられること追い詰められることモブがポンポン死ぬこと人質拷問罵詈雑言エロラブラブなどが出てくる映画は観ない、ようするに映画をほとんど観ないのだけど観たら観たで猫に遭遇した猫のように固まって凝視してしまう。
そしてそのあとずっとその内容のことを考え続けてしまい、手をつけなきゃいけないことに頭がなかなか戻ってこられない。
テレビを止めて猫をさわる。
パソコンの異音みたいないびきをかいて寝ている。


映画「世界の終わりの、そのあとで」の動画配信が始まったらしい。
(映画を観ないといったすぐあとに書くことではない気もするが。)
読者さんから観たいという要望をいただいていたのでうれしい。
監督の上田浄介さんは原作者がじゃっかんあきれるくらいに原作に忠実に作ろうとし、観終わった方々からもそのような感想が届いた。
けれどこの映画の主人公・耕平と私のかいた耕平はやはり別人だと思う。
言葉や行動の選択は同じだけれど、動機やヒロイン絵子への評価、出した答えが根本的にちがうと感じた。
そこに原作にはない、上田監督のロマンチックな作風が出ているのだと思う。
あとなにしろ小宮一葉さんと田村健太郎さんがかわいいったらない。
よくこんな、私の好きなタイプのふたりを見つけてきたなあと、見透かされたようで多少気恥ずかしい。
三好(藍川みなとさん)は映画でもいいやつである。


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↓原作もよろしくどうぞ





この526 猫が寝床にかえる日

スーパーでパックのお寿司とビールを買って晩ごはん。
子供の頃、こういう買い物のしかたをするおじさんを見るとなんだか苦しくなった。
ものすごくさびしいかなしい姿に見えた。
あのころの私に教えてやりたい。
いいかい、おばちゃんはこう思っているんだ。

O.SU.SHI...! O.SU.SHI...!
ビール!ビール!O.SU.SHI...!!!

やっぱり子供のころの私のほうが正しかったかもしれない。
寝る。

起きる。
涼しくて布団がきもちいい。猫の甘えも執拗である。
今日はなにか用事があったような気がするのだけどまったく思い出せないので思いちがいということに決定。

やー、まいった。
なーーーんにもやる気がしない。
けれど私は恵まれている。顔も洗わず歯も磨かず、7歩ほど移動すれば職場だ。
職場から7歩移動で布団に到着してしまうという誘惑にも晒されてはいるが。

勤め人というひとを心底尊敬する。
毎朝整髪料を付けては夜洗って落とすひとを。
毎日化粧をしストッキングを履くひとを。
嫌いな人間のいる場所に何年も出向いているひとを。
偉業だ。
私は好きなひとにだって毎日は会いたくない。
猫が言葉をしゃべらなくてよかった。

冷凍ごはんのストックを切らしていたのでそうめんをゆでる。
そうめんは好きだ。年間通して食べる。
真冬でもこたつに入って食べる。
2分でゆであがるというのも素晴らしい。
香川県出身の友人のお父上に「讃岐といえば!そうめんがおいしいですよね!」と言ってひどくがっかりさせてしまったことがある。
うどんどんだけ。そうめんにも愛を…

先日購入した座布団大の梱包用ロープのカタマリの置場所に困り、猫が飽きて使わなくなった円形の寝床になんとなく当ててみたらまるで専用ケースのようにぴたりとはまった。
するとその上で猫が寝るようになった。
きみたちのことはわからん。

冷蔵庫のなかにある梨を希望に漫画描く。

この525 長い夢を見る日

友人が赤ちゃんのおんぶひもというか背負子のようなものを段ボールで自作し軍人の装備みたいになっていてめちゃくちゃかっこいい夢。

合宿で自動車運転免許を取りに行ったら受講者たちにやたら友情と団結と精神の修練を求められる合宿所で、いさかいや恋模様なんかも生まれるしもう脱走したくてたまらない。
が、ほかの受講者も協調性のない私の脱落を心待ちにしていて利害が一致しており、しゃくだから居座り続けてやる夢。

その受講者のなかに有名なお笑い芸人がいて、まだ売れていないころバイク事故に遭い右手が親指しかなく、テレビでしょっちゅう見ていたのにずっと気づかなかったことに驚く夢。

実は運転免許ではなくて裏稼業の特殊技能を身につける合宿だった(おかしいと思ったのだ。私は運転免許を持っている)ため、その後公安やおヤバイ組織から逃げ回る生活をする夢。

ひさしぶりに部屋に帰ったら散らかったままだったのでせっせと片付ける夢。

いっぱい夢を見て朝から疲れた。
起きたら部屋が散らかったままなことにいちばんぐったりした。

すこしまえから始めたこの日記のようななにかを松田奈緒子さんがほめてくれてうれしい。
松田さんの漫画には活劇の痛快と爽快があって大好きだしご本人もスカッと気持ちのよいお方だ。
こんな気持ちのよいひとはそういないぞ、とお会いするたび思い、労せずに自分の人生の質まで上がったような得した気分になる。

日記がんばるぞ、いや、がんばらないぞ、とすぐ思いなおす。
がんばらずにまあまあ続けていく、というのが私は下手だ。
やると決めたらボロッカスの廃人みたいになるまでやってしまうし、それ以外のことを全部ほったらかしにしてしまう。
こういう極端なものの作り方は「全身全霊のひと」という印象を与えやすくキャッチ―にひとの胸を打つようなところがあるが、プロとしてはいかがなものだろうという疑問がずっとあった。
(そのやり方でないと商業誌掲載の水準まで届かなかったという事情はあるのだが)
持続を困難にさせるような作り方を自らするのは無責任とも言えるのではと。

は、また一生懸命書くとこだった。危ない。

ネームの返事を待ちながら、今日はコミティア用の漫画の仕度。
さんざん待たせてきた。こっちが待つ順番がきちゃったな、と思う。

この524 レディの誕生日が近い日

こってりラーメンが食べたい衝動とともに起床。昼。

しむらさんとしむらさんのアシスタント・レディと朝食をかねた昼食。
その後の仕事に差し支えるといけないのでなにかもっとおなかにやさしいものでもよいのですよ、体調と気分のバランスは大切です、無理せずに、などと小うるさくおせっかいを焼きつつ結局ラーメン屋へ。
食後に具合を壊したのは私であった。

「絵がうまくなりたいよ~急にうまくなりたいよ~努力しないでうまくなりたいよ~」と、
杜撰になげきながら胃と一緒に椅子にもたれる。

レディが誕生日を控えているというので回復を待ってケーキを買いにいく。
体調と気分なら気分優先に決まっている。
長野パープルとシャインマスカットのタルトという素晴らしいものをいただく。

初期のモーニング娘。の動画を観ながら最近矢口真里さんを好きになってきたかもしれない話など。
なんだかんだあったようだけれどやっぱりものすごいガッツのあるひとだと思った。
私は、なかなか理解されずなかなか結果につながらなくとも
ちょっと見苦しいぐらいにがんばってしまうひとの姿というのは好きなのだ。

「今日は急に冷えるから風邪などひかないように温かくしてくださいね」などとと懲りずにまた小せっかいを焼きつつさようなら。
この流れでいくと風邪をひくのも私だな、なんて思いながら帰宅。

帰りに発送しようと思っていたBOOTH通販の同人誌をうっかり持ち帰ってしまう。
あーあ。
11月のコミティア申し込み。毎日少しずつでも進めて次も新刊を出したい。
がんばろう!(ほんとうに思っています)。

この523 家でお弁当を食べる日

とうもろこしごはん、大根とじゃこ天の煮物、つくね入り巾着の煮物、キュウリの古漬け、かぼちゃのサラダ。
このごろのできごとをまとめたような、茶色いお弁当ができた。
どこにもでかけないが、なんとなく楽しいから良いのである。

ネームやる。
お弁当食べる。
ネームできた。
編集部に送った。
今度こそうまくいくやつだ。

…と、毎回毎回思っているのだが、この一年全滅している。
いや、1個だけ通ったのがあった。
今月のオフィスユーに載る読み切り。
Twitterで告知したところ読者さんが「おめでとう」と喜んでくれた。
ちょっと複雑な心境だ。
この読み切りは2月か3月ごろ制作したもので、実はすでに原稿料をいただいている。
なので掲載されても当然入金はない。
なにかのまちがいで振り込まれないだろうか。
そして「あっまちがえちゃった?いっけね!まあいいよあげるあげる!カネならうなるほどあるからさガッハッハ!」とかいってそのままもらえちゃったりしないだろうか。

まちがえた。
複雑な心境というのはそのことではない。
2月か3月ごろ描き上げて、それから続編にあたるネームをいくつか作ったがどれも決め手にならず、結局この話で連載を目指すのは断念したのだ。
こういう宙ぶらりんな読み切りは単行本になりにくい。
自分の今の状況を考えると、絶望的とまでは言わないがけっこう近いかもしれない。
なのでぜひ雑誌をチェックしてください。
9月23日ごろ発売のオフィスユー、「恋いぞこないのサンバ」という漫画です。
唐突に宣伝でした。

でんやこのごろ ~イシデ電ブログ~

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