この533 風呂好きに論破される日

恥をしのんで言うけれど、お風呂があまり好きではない。
衛生面で他人に迷惑をかけないために仕方なしにシャワーは使う、という感じ。
清潔うんぬんだけでなく、肩とか腰とか首とかこのまえからずっと傷めているひざとか、ひざをかばうせいでガチガチの筋肉疲労を起こしているふくらはぎとか、代謝がどうとかこうとか、健康のためにもうたぶんぜったいお湯に浸かったほうがよいに決まっているのはわかっている。

お風呂が好きだというひとに「浴槽に浸かっている間、何をしているのか?」と訊いたら
「浴槽に浸かっている」と答えた。あそっか。
そして浸かりながら「お風呂に感謝」とか「お風呂を発明したひとを表彰すべき」とか思うらしい。
そんなことちらっとも考えたことがない。
私はその時間が耐えられず本などを読むのだけれど、「今ってそれなりに忙しいはずなのに、なぜ私は特段読みたくもない本を読んでいるのだろう???」という疑問と焦りでいっぱいになってしまう。

それにお風呂に毎日浸かるひとには、セットでお風呂掃除とお湯を張る手間もついてくるではないか。
面倒で毎日なんてとてもやっていられない。
…と、これまたお風呂好きのひとにからんだところ、満足するまで浸かったらさっさとお湯を抜いて「こすらず流せるタイプ」の洗剤をスプレーし、頭や体を洗っているあいだ放置して、上がる際にシャワーで落とすという。
なんという効率。しかしあれだ。
こすらず流せるタイプの洗剤を、本当にこすらず済ませるには相当な量の洗剤を消費するのではないか、不経済ではないか、と食い下がると
「それはそうだけれどきみのようにたまにしか浸からない人間にとっては大した不経済にならず、手間いらずのメリットのほうが大きいではないか」ともっともなことを言われてしまった。

そうじとか洗濯とか、死ぬまでずっと続けなくてはならないことが、好きなひとがうらやましい。
今までに2~3回しかお風呂に入ったことがない猫たちのこともうらやましい。

死ぬまでずっと、で不意に思い出したが10代の一時期、「食べることに興味がない」というのに憧れて真似してみようとしたことがあった。無謀なことはやめろと言いたい。

この532 甘い蕎麦と知りながら食べる日

子供のころ読んでいた「なかよし」の作家さんに会う夢を見ていた。

雄猫に頭をポテポテと叩かれて目が覚める。夕方。
眠りが明けるか明けないかの頃合いに決まって起こしにやってくる。
どうやって飼い主の睡眠の終わりを知るのだろう。
血流や脈の音が聞こえているのだろうか。

つゆが甘すぎる蕎麦屋でしむらさんと食事。
蕎麦とカツ丼のセット。甘い、ほんとうに甘い。
「11ぴきのねこ」の話など。

外から戻ると雄猫が玄関先まで迎えに来ていた。これもまた不思議。
履いているのがスニーカーだろうとヒール靴だろうと、ちゃんと飼い主の足音と判別できているようだ。
猫に人間離れというのもおかしいが、超人的能力が身近にあるというのはドキドキする。

冷蔵庫に手をつっこみぶどうを3粒ちぎって食べながら仕事机に向かう。
漫画をかく。


この531 桃思いにふける日

野生動物が気の毒だ。
ひざサポーターがない。
すべての中高年野生動物はひざサポーターのラクさを知らずに過酷な自然のなかを生き抜いていると思うと胸が痛くなる。
…てくらいにラクである。

筋トレでひざを傷めて運動をやめてしまったせいで、元の体力なしなしマンに戻ってしまった。
目が覚めて起きて行動を始めるまでにやたらと時間がかかる。
一時的なものと思っていたのによくなる気配がない。
もしやこれは、伝統的通販番組でおじいさんおばあさんが訴え続けている、かの慢性的ひざ痛かもしれない。
ためしにサポーターなるものを購入、着けてみたところでこのラクさである。ありがとう文明。

サポ巻きの太いひざで歩いて旬を過ぎた桃を買いに行く。
皮ごと食べるのにハマった。
食べてみるまではとても抵抗があった。
桃の皮には細かい毛が生えていて、じつはとげに近い。
こどものころ顔面に刺さってたいへんな思いをしたことがある。
同級生の家に行ったとき、彼女の小さな妹に桃を頬に押し当てられたのだ。
たいへんかわいらしいしぐさだった。
ところが、そのあと、どうも頬のようすがおかしい。
さわるとチリチリと痛む。
洗ってもなかなかとれない。
こするたび痛む。
友人や友人のおかあさんに言ってもそんなはずはないと信じてもらえない。
幼い妹はニコニコしている。
ならば同じことをこの小さい子に仕返してやろうか、と怒りがわいた。
もちろんしない。そんな恐ろしいことは絶対にできないくらい痛かったのだ。
以降、桃の皮には要注意なのだった。

その件を思い起こしながら桃を手に、流水で丁寧に洗って毛を落として食べる。
滋味というのだろうか。皮のかすかな渋みが甘味を際立てる。おいしい。
思い出もあいまってスリリングな愉しみ。
(ちなみに桃の皮でアレルギー症状が出るひともいるらしくスリリングどころで済まない場合があるのでご注意)

今年の夏は出始めのスイカの価格が高騰して手が出せず、食べ始めるのが遅かった。
あわててスイカをむしゃむしゃしているうちにあっという間に梨が出回り出した。
梨をシャリシャリ食べながら「ああ、桃、まだ食べていないのに…」と心残りがあった。
逃さずすんでよかった。
次はぶどう、それからりんご、柿。
夏秋は旬のくだものを追いかけるのに忙しい。

この530 ズボンなんかどうだっていい日

部屋着のズボンのウエストのゴムを換えたらすこぶる快適だ。
いままでヘアゴムやクリップで留めたりしてだましだまし履いていたがいよいよだましきれなくなってきた。
腰履き野郎の生き残り、ここに没す。
20代まではカッコツケてジャージというものを軽蔑し家でもずっとデニムを履いていたが、
いま履いているのはジャージよりも存在の軽い、なんというのだろう、ズボン界でもっとも身分の低そうなズボンだ。ひざに穴もあいている。

ところで最近の若いひとは「ズボン」ではなく「パンツ」と言う、というのは私が「最近の若いひと」だったころからもうずーっと言われている。
でもどうだろう?と思う。
パンツ呼びがどんなに浸透しても、ズボンはズボンでしっかり生き残っていく言葉だと思う。
なにしろパンツは決定的な弱点、「文字で書くと下着なのか服なのかわかりにくい問題」を抱えているのだから。
そこを最初からクリアしているズボンくんを相手にパンツくんも健闘しているが、駆逐するのは無理だろうなと思う。

はーどうでもいい、死ぬほどどうでもいい。
本当はズボンのこともパンツのこともそんなにまじめに考えてなんかいない。
書くことないなら書かんでよろしい。
今日はなんだか体調がおかしい。

小学校の朝礼のときの「やばい…あ~…やばい…これ…やばい…」という状態をキープしている。
起きているのはしんどい。
横になって見る夢は悪夢ばかり。
猫だけがすばらしい。もう一度。
猫だけがすばらしい。






この529 めがねを新調する日

ネームをpcで作るようになってから転げ落ちるように目が見えづらくなっている。つらい。
40がらみの漫画家飲み会で必ず話題に登るあれが自分にも来たのか。

めがねは好きだ。めがねをかけている女性も男性も好き。
めがねをかけている人間にはめがねをかけるに至るまでの経緯がある。
それをいろいろ想像する。ポジティブなものもネガティブなものも、だいたい好ましく思える。
しかしめがね好きの私とはかなり長い付き合いにもかかわらず無視され続けているめがねびとがいる。
私だ。
おっぱい好きの女子が自分の乳は完スルーなのと同様、自分のめがねなどなんだっていい。
コップの底でものぞいてろという気分である。

しかしコップで仕事ははかどらない。
眼鏡店へ行かなくてはならない。
めがねは顔の一部だ、皮膚だ、いや臓器のひとつだ。
これから私に会うひとはめがねごと「イシデ」と認識する。
鼻や目や口は選べないがめがねは選べる。
「なんだっていい」のなら不恰好じゃないほうを選ぶにこしたことはない。
自分を奮い立たせる。ゆけ、ゆけ、荒野を。
ローレンローレンローレン、ローレンローレンローレン…
完全に老眼を意識したテーマを頭のなかで口ずさみながら店に入る。

眼鏡店で勤務経験のある知人に教わった、めがねのつるに書いてある数字の読み方を思い出しながら選んでいく。
「53□18-140」
最初の2ケタがレンズの横幅のサイズだ。
つまりここの数値が大きければ眼鏡全体の横幅も大きくなる。
横幅が小さいめがねは顔面の大きさがきわだって悲しくなる。
しかし大きければよいというものではない。
私は現在マッシュルームカットをしており、極端に大きいと大木凡人になる。
なにを言う、むしろそこを目指してこそのキノコ頭ではないのか。う、だかしかし。
ひとしきり迷って55bondくらいのものを選んだ。

店員さんによると、見えづらいのは視力の低下ではなく疲れ目によるもので、めがねの度数はむしろ下げたほうがよいかもしれないという。
見えないから疲れるというよりめがねの強い度数に合わせて見ようと調節する神経が疲れるから疲れる。
度数をすこし落とせば楽になり、肩こり首こりも楽になり頭痛は治り緊張型の性格は穏やかになり大らかになり寛容になり多くのひとに愛され私もまた人類を愛し世界は平和になり戦争はなくなるという。
嘘だ、そんなことは言っていない。
めがねの完成を待っているあいだの30分が期待を過剰にさせる。

めがねの新調じたいが急な出費であるにもかかわらず、気が大きくなってまわるお寿司を茶碗蒸しまで添えて食べてしまった。


この528 ペヤングに味噌汁を添える日

ネーム、またボツになる。

つくづく向いていない。
けれどほかになんの仕事ができるんだろう。
毎日やれることって漫画しかないのに。
あとは猫のトイレ掃除と、呼吸と…と続いているものを探すが思いつかなさに落ち込む。
またアシスタントやるにしても、年上で漫画家づらのへたくそなアシなんて扱いづらいよなあ…

Twitterで流れてきた性格診断心理テストをいたずらにやってみたら、向いている業種はなく、適職は呪術師と出た。
呪う力と常識のなさを評価された。うるせえ。

ええい、椅子からぴょんと立ち上がって
「ん・で・だ・よー!!?おもしれーじゃんかよーこのネーム!!」と大げさに肩を揺らしガニ股で歩いてみる。
顔は森田まさのり先生ふうに。

ごはんにしましょう。

景気付けに、お楽しみにとっておいたペヤングを解禁。
なんと紅しょうがもあるんですのよ。
あとは焼いた鶏肉とセロリのぬか漬けとお味噌汁。

味噌は赤味噌と麦味噌を常備していて、お味噌汁に入れる比率でその日の気持ちが占える。
麦が多いときはいたわりや慰めを求めていて、キリッとしたいときは赤が多くなる。
気合いを入れて打ち合わせに臨みたいときなどは完全に赤だけ。

意外と元気あるな私、と、赤いお味噌汁をおたまでまわしながら思う。
元気があれば作戦会議ができる。
次の手を考えながらごはん。
それから原稿作業。
落ち込んでいるあいだにすっかり手が止まってしまった。

PC作業のかたわらちょいとテレビをつけてみたらどのチャンネルも不倫のことばかり。
不倫のニュースが終わったらまた別のひとの不倫。
Eテレ、おかあさんといっしょに落ち着く。
着ぐるみキャラの目のハイライトの過剰さが気に入らない。
キャラクターの目の輝きとは心のなかに見いだすものだ、ミッフィーくんを見たまえ。
昨今のきらきらおめめのキティ氏はなんだ、なげかわしい…
と、エアくちひげをひっぱりながらぶつぶつ。

猫が2匹ともトイレでおならをしたのが心配である。
2匹同様の体調不良があるということは飼い主がなにかやらかしている可能性がある。
…と思うのだがうちの猫たちは健康診断の結果もほとんど同じで、同時に調子をくずして同時に治まるということがわりとある。
2匹いっぺんに死んじゃったらどうなるんだろう私…とわきあがってくる不安をぐっとこらえる。

なにか楽しげなものをと、プライムビデオで「ウレロ 未確認少女」をかける。
東京03の飯塚氏が演じる、唯一のまじめな常識人なのにキレるとえげつないほど暴力的な人格に豹変し周囲の人間全員を震え上がらせるキャラクターが好きで、その場面を心待ちにしてしまう。
自分の嗜好に多少引く。

この527 映画から戻れない日

夜中に原稿作業をしていたら台所のほうでガタンと物音がしたのでビクビクしつつ確認しにいったとき手にしていたのはうさぎのぬいぐるみであった。
もっとこうさ、あるでしょうクイックルワイパーとかスマホとかさ。
危機管理能力テスト、0点。

流しに洗い物をまたためてしまった。
物音は、そいつがずれた音のようだ。
今日の原稿作業はここまで、と食器を片付ける。

お酒を飲みながら寝落ちするまで次のネームのネタ出し。
明るくなってきたのでごみを出して寝る。

昼過ぎに起きて原稿。
今日はきのうのつづき、明日は今日のつづき。

のはずが、たまたま流れていたテレ東の映画を途中からなのに一生懸命観てしまう。
なんか、ひとに火をつけたり逃げたりおっかけたりピストル打ったり大金盗もうとして電車乗っ取ったり衝突させたりするやつ。

動揺させられるのが苦手なので、でかいものやでかい音や速いもの高いところから落ちそうになること陥れられること追い詰められることモブがポンポン死ぬこと人質拷問罵詈雑言エロラブラブなどが出てくる映画は観ない、ようするに映画をほとんど観ないのだけど観たら観たで猫に遭遇した猫のように固まって凝視してしまう。
そしてそのあとずっとその内容のことを考え続けてしまい、手をつけなきゃいけないことに頭がなかなか戻ってこられない。
テレビを止めて猫をさわる。
パソコンの異音みたいないびきをかいて寝ている。


映画「世界の終わりの、そのあとで」の動画配信が始まったらしい。
(映画を観ないといったすぐあとに書くことではない気もするが。)
読者さんから観たいという要望をいただいていたのでうれしい。
監督の上田浄介さんは原作者がじゃっかんあきれるくらいに原作に忠実に作ろうとし、観終わった方々からもそのような感想が届いた。
けれどこの映画の主人公・耕平と私のかいた耕平はやはり別人だと思う。
言葉や行動の選択は同じだけれど、動機やヒロイン絵子への評価、出した答えが根本的にちがうと感じた。
そこに原作にはない、上田監督のロマンチックな作風が出ているのだと思う。
あとなにしろ小宮一葉さんと田村健太郎さんがかわいいったらない。
よくこんな、私の好きなタイプのふたりを見つけてきたなあと、見透かされたようで多少気恥ずかしい。
三好(藍川みなとさん)は映画でもいいやつである。


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